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小布巾で拭いている芙逢ちゃん(1.8歳)
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小布巾を丸めて絞っています。
1.5歳〜2.9歳の子ども11人を前に、小盆、お椀2個、小布巾を準備して、保育士
がお椀に差した水を静かに傾けて、別のお椀に移す作業を何回も繰り返して見せます。
水がこぼれたら、小布巾で拭き、絞ります。
子どもたちは好奇心の目で観察し、そしてそれぞれが作業開始。お椀の水を飲もうとする子、じっと隣のお友だちの様子を見てから始める子。すぐに始める子、沈黙の時間が続きます。そこには一つのテーブルに保育士がつき、移す様子、集中する時間をみます。
飽きがきて、勝手に遊び始めた子には、他の遊びに誘います。15分、20分、30分、と時間の経過とともに人数が減ってきます。
残り3人、2人、そして一人になった芙逢ちゃん(1.8歳)。何回もあけ移しを上手に繰り返し、溢れると小布巾で拭きます。絞る手際は年齢的に今一ですが、挑戦しています。保育士が絞ってあげると「ありがとう」。
途中、席を移してもそのことに熱中。時間が迫って給食の準備をしなければならないので、隣の赤ちゃんたちの保育室に移動してもらう。それでも続きを行う。繰り返すその作業に飽きません。隣で給食が始まると、お椀を重ねて、おしまいと、保育士に差し出す。52分経過。長い集中時間でした。
『モンテッソリー教育』(理論と実践)日常生活の練習 第二刊によると次のような記述があります。
ある日、モンテッソリーは円柱さしの作業をしている3歳の女の子を見て非常に関心をもち、ちょうどその子の成長に適した教具でしたが、3歳にみられる精神集中よりもさらに遥かなものがあったので、女教師に頼んで他の子どもたちに歌をうたわせたり、その子のまわりを回らせたりしたのです。ところが、その子はこの騒ぎには無関心で自分の作業を繰り返しているのです。そこでモンテッソリー自ら妨害を試みたのですが、同じく作業を繰り返したのです。そうしてその子は同じ作業を何回か繰り返したのち、それを終えました。長い集中時間のあとであるにもかかわらず少しも疲れた様子を示さなかったのです。
現場で保育している私たちにとっては、どんなに声がけしても耳を貸さずに自分の作業に集中している子がいます。その時期に必要なものを獲得するために、環境中の特定の要素に対して、特別に敏感な感受性が、一定期間だけ現れてくるのです と、モンテッソリーは述べています。
ここに子どもたちに試みた水のあけ移しで、芙逢ちゃんの作業に教えられるものがあります。
2021.8.31 写真/文 猪俣美智子