寒い冬が溶けて、しばらく経って春もたけなわ、食料品の店頭にいち早く並ぶのは、孟宗竹のタケノコ。旬のもので、必ず買い求めて糠で湯がいて食べる。調理法は色々あり、酢みそで食べるのが好き。その次にはカラダケが並ぶ。店頭に並ぶ前にこのところ近所の人が、タケノコ狩りに行って来たと、細長いカラダケを分けてくださる。湯がく必要はなく、そのまま味噌汁に入れて食べる。とても新鮮で美味しい。
遠い昔、母からそのカラダケの根っ子の固いところで「一輪挿し」をつくってもらっていた。嬉しくて庭の草花を挿して遊んだものだ。全く同じことをこのカラダケで私も作る。バラの花を挿して、保育所の2歳児クラスの子どもたちのテーブルに置いて眺めてもらう。「きれーい」と器ではなくバラを見て言う。器を指差して「これね、先生が作ったのよ。上手でしょ」と、自慢すれば「すごーい」と反応してくれたひなた(2歳8ヶ月)ちゃん。笑顔が可愛い。誉められると嬉しいものだ。
その日、仲間入りした「タケノコの一輪挿し」は、夕方には竹独特の色艶を失い萎びかけていた。束の間の伝統の遊びを大切にしたい。
2016.5.16 写真&文 猪俣美智子