旅行ガイドブックを見ると、ニューヨーク市のマンハッタンを通称「ビッグアップル」と呼ばれるらしい。そのルーツを尋ねることはさておき、「………、諸説ある中で、競走馬の大好物リンゴから由来するというのがほぼオフィシャルに認定されている説だ。1921年のある日、ニューオリンズのベルモント競馬場に向かう競走馬を馬小屋の使用人たちが、『この馬達はレースに勝ってご褒美にもらえる甘いビッグアップルを目指しているのさ』と言ったことを、『ニューヨーク・モーニング・テレグラフ』に書いた新聞記者ジョン・J・フィッツジエラルドの記事が始まりとされている」。註:『わがまま歩き12「ニューヨーク」』(実業之日本社、2012)
そして1970年代初頭には、現在のニューヨーク市のマーケティングと観光政策の公式組織であるNYC&Companyの社長の下、ニューヨーク市を「the Big Apple」とする促進活動を始め、それ以降この言葉は一般に通じるようになったとのこと。
現地に着いて最初に食べたリンゴが日本でいう、紅玉(こうぎょく)に似ていて、その味のおいしかったこと。紅玉の原産は米国ニュ—ヨーク州。実際には種類も多く、大きいものから姫リンゴ、青いリンゴもある。宿泊したホテルのレストランには丸ごとのリンゴが、このまま食べてください、とばかりに積んで置いてある。また、ショーウインドーには、かじられた形のリンゴが美しく装飾された置物もあった。
ブロードウエイには54丁目の道路標示とともに大きく「BIG APPLE」と書かれてあった。折からのクリスマスツリーの飾りに赤いリンゴだけのものも多かった。シティ・フィールドにあるニューヨーク・メッツのホームラン・アップル。そして、お土産品には「I ♥ NY」の表示とともに、赤いリンゴのマーク入りのものが数多くみられた。Tシャツ、マグカップ、キーホルダー、マグネット、かわいい置物等々。
ニューヨークは人種のるつぼである。そのような中で、たくさんの人が大きなリンゴをかじられるように、世界中から夢をおいかけて人が集まってくるところでもあり、特にマンハッタンの観光客の多いのには驚かされた。
2014年(平成26)1月 猪俣美智子記