社会福祉法人 アイリス康友会 曽師保育所 令和4年3月1日完成 建築家 歌一洋 元近畿大学教授
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2019年05月09日(木)14時07分

人間ボウリング〜実践記録

    人間ボウリング〜実践記録
                          
                                1歳児担任 猪原 祐香

1.始めに
新学期がスタートしてしばらく経ったある日のこと。片手でボールを転がしながら「ボーイングー」と言いだした懸誠ちゃん(1歳11ヶ月)。何を言っているかわからずもしかして「ボウリングのこと…?」と疑いながら母に尋ねると「最近好きなんですよ 動画を見てからはまってしまったんです」と笑って教えてくださった。ここから本児の園でのボウリングあそびが始まった。
はじめの頃はただ立ってボールを床に置き転がしていただけ。その形が次第に変化をみせていった。

・ひとりで夢中
 ブロックで遊んでいると1つ立ててタイヤを転がしボウリングに見立てて遊ぶ。
 園庭で筒状の玩具を立てて、もうひとつの同じ形状の玩具を転がして倒して遊ぶ。
母:家でもずっとボウリングしています。

・なんでもボウリング
 遊戯室で他児がブロックを並べたり、上に座ったりして遊んでいる中、細長いブロックを立ててボウリングを始めた。他の子どもたちは、まだ本児が何をしているのかあまりわかっていない様で遊んだり通り過ぎたりしていた。誰にも邪魔されない環境でのびのびとボウリングをして遊ぶ事が出来た。

7月8月
 この頃になると、ボールを持ってそっと投げていた。以前の様に床に置くことは無くなってきた。そしてしっかり片足を前に出して曲げている。
お菓子の空き箱で遊んでいると、突然箱を投げ出す。見ると、ボウリングの構えをして四角い空き箱を縦向きに転がそうするが上手く転がせられないために投げる様な状況になってしまう。

母:まだまだボウリング熱が冷めることはないみたいです…。

2.人間ボウリング
 いつもの様に、遊戯室でブロックを並べて、ボウリングあそびをしていた。そこで、他の職員の協力の下、構えていた本児の先に職員が座ってみて、本児がブロックを転がした直後に「わぁ〜」とたおれてみたところ、声を出して笑う。そこから指を1本立てたり「もーっかい」と催促をしたりして人間ボウリングが始まった。何日かその遊びをしていくと、自分から保育士のそばに来て「お座りしてー」と床を叩いていた。このころはブロックを倒すことより保育士を倒すということの方が楽しんでいる様にみえた。
 ある時、本児が倒す準備をしている間に、通りかかった保育士を呼び止め保育士3人並んでみた。振り返って気づいた本児はそれだけで目を輝かせ「わぁー!」と大興奮。3人まとめて倒れると「わはははは」とさらに笑い、起きて!と嬉しそうに起こしにきたり、手を叩いて笑った後にハイタッチをしたり、もう1回!と床を叩いて催促したりしていた。このことを母に伝えると、

母:自分で投げて、倒れてと人間ボウリングをしていました。

その後も
母:家でも楽しそうに「せーせーがー」と言ってひとりで倒れる真似をしたり、何と言ってるか分からないけど保育園での話をしてくれます。
 
・ボウリング行きたいな
園ではいつも夢中で楽しそうにあそんでいる一方家でもボウリングばかりだという。何でもボウリング。
そしてある日、ブロック遊びをしながら独りごとを言った「ボーリング行きたいな」。その言葉はとても切なく聞こえた。母と話す機会があり、このことを伝えてみると「行ったら長くなって帰れなくなるから、ボウリングは行きません」と笑っていた。なんと、一度ボウリングに行くとなかなか帰りたがらず、6時間以上も遊ぶこともあったと言う。
すると、次第にボウリングの回数が減り、ブロックを2本頭の上に立てて鬼になりきって遊ぶようになって、少しずつボウリングが薄れていった。他児との関わりも上手くできるようになってきて、ひとりで遊ぶより他児と並んで遊ぶ姿が増えてきた。ボウリングは全くしなくなったというわけではなく、生活のなかにまだ時々出てくることはある。

・触らないで見ててね
遊戯室で他児がブロックで遊んでいる中、細長いブロックをいくつか立ててボウリングを始めた。興味をもった他児が近づいてくると「見ててね」と優しく声をかけていたが、その言葉の裏側には「触らないで見ててね」という言葉が隠されていた。一度声を掛けても構わず近寄ってくる他児に対して必死に「見ててね」と繰り返していた。それでも他児がブロックを倒したり持っていったりしてしまうと、泣いたり怒ったりすることなくじっと目で追い新しくブロックを置いていた。
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細いブロックをいくつか立てて、ボウリングを始める。

3.本物そっくり
園庭遊び時に、ペットボトルを、数本並べて砂遊びをしていた他児に「ボウリングは?」と尋ねてみた。すると嬉しそうに近寄ってきて倒そうとするがボールとして使っていた筒が辺りにない。誰かが遊んでいるのか、すると、土山の土を両手で握りしめて固めてボールに見立てて倒そうとしていた。土は上手く転がらず途中で壊れてしまったが、それでも数回は作り直していた。
また別の日のこと。いつものペットボトルを並べてひとりでボウリングをし始める。そこで、地面に線を2つ引いてレーンを描くとニヤっとしてその線と線の間にペットボトルを、並べて筒を転がしあそび始めた。
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園庭でペットボトルを立て、地面に線を引く。土の団子をボールに見立てて転がすが、すぐ壊れる。

・木のマグネット玩具
 細長いブロックをいくつも並べてボールで倒していた。全部倒れるまで転がし倒れると「やったーいぇーい」と言い、「せんせーもする?」と、時々ボールを貸してくれた。このボールにはサッカーボールの模様の様に丸いマグネットの部分があり、そこに指をいれようとしていた。ボウリングの穴に指を入れるかの様に…。
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サッカーボールのように模様のあるボールに指を入れる真似をする。

 別の日、また同じ玩具で遊んでいるとボウリングを始めた。
しかし丸いブロックは他児が遊んでいたためボールは無く、静かに正方形のブロックをそっと転がしていた。ブロックはほとんど転がることは無かったがそれでも楽しそうにしていた。
 この頃から悠羽ちゃんがボウリングの真似をする様になった。けれど、一緒に遊ぶというより
は並んで本児の真似をして転がすというもの。しかし、近くでされると、好まないか不満げな表情をしていた。保育士のそばに来て足を握ったり「あし、こーして」と言って立ったまま開いてみせたりした。保育士が真似して開くとそこを目掛けていつものフォームでボールを転がし、上手く股の下を通ると「やったぁーもっかーい」と喜んだ。この遊びをすることが増えてきた。
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正方形のブロックをボール代わりにして転がすが、転がらない。

 本児がとても楽しそうにボウリングあそびをしているので、興味をもつこどもが増えてブロックを持って行ってしまう子や倒して笑う子も居た。すると、以前は困って保育士に助けを求めたり静かに並べ直すだけの本児であったが、泣いたり怒ったり、時には相手を叩いてしまうこともでてくるようになった。先月母の妊娠がわかり、少し情緒が乱れる様になってきた時期でもあった。そこで、他児とのトラブルをなくすために別室に誘ってみた。「あっちのお部屋でボウリングする?」と尋ねると「うん、あっち行く」と言い、その時青組では絵本を見ていたが青組の部屋の一部を借り、ひとりでボウリングをしてあそぶこととなった。不安を感じていないか気になって時折本児の様子を見に行ったが誰にも邪魔されずにあそべることが嬉しそうに見えた。

 2歳半にしてすっかりボウリングのフォームもきまってきた。まず、右手でボールになるものを持って両足を揃え、左手を右手に添えてから勢い良く腕を振って転がす。ボールの進路も同じくらいの月齢の他児に比べてまっすぐ力強く進んでいる。

・お絵かきをしていたある日のこと
 いしころーる(掌の中に収まるクレヨン)を持ちぐるぐると自由に絵を描いて、「あおー」といしころーるの色を言っていた。数分この姿が続いたところで、「ボウリング」と呟やきながら手を動かし少しカーブがかった線を4、5本描いていた。「どれがボウリングなの?」と尋ねると「これよ!」と絵を指す。そして次の瞬間その線の上にいしころーるを転がしていた。もしかしてボウリングのレーンを描いていたのかもしれない。「いひひっ」と満足げに笑っていた。

・お友達と一緒に
夕方、悠羽ちゃんと遊戯室でボウリングをしていた。お互い向かい合う様に部屋の端と端の壁際に立ち「ボウリング」と言って投げ、当たっても当たらなくても「わぁ~」と言いながらもう片方が倒れるというもの。この時は当たる様に投げるというわけではなく、倒れる方が楽しんでいるようにみえた。そうしていると、小石の迎えも来て本児ひとりになってしまった。ひとりになってからは、「ねぇ、しよう」と保育士を誘い同じ様にして一緒に遊んだ。保育士が投げる側になった際に「どうやってするの?」とわからないふりをしてみせると「ちがう!こーやってするの!」と片足を立てたり腕を振って見せたりして教えてくれた。本児が打った通りにしてみると、「そう!そう!」とまるでボウリングの先生の様だった。そうしていると玄関先のライトがつき「懸誠ちゃんお母さんかなぁ?」と声をかけると「ええっ?」と玄関の柵に手をかけたが残念なことに誰も立っていなかった。期待させてしまって申し訳ないことをしたなぁ、と思っていると「まぁいっかぁーもぅいっかい、しよぉっと!」と笑い再びボウリングを始めた。母のお迎えではなかった、とわかって寂しがるどころか、今はボウリングを続けられることの方が喜んでいるように感じた。

 ある日、遊戯室の床にテープで直径50センチ程の一つの円と線を記してみた。円の中に立ち、並べたペットボトルに向かってボールを転がして見せると、「お友だちの分の丸も」と言うかのように、「こっちもかいて」と床を指さしていた。人数分の円を描くと、嬉しそうに微笑みながら保育士の真似をして円の中に立ちペットボトルに向かってボールを転がしていた。さすが懸誠ちゃん。上手にボールを転がし、倒れると満足そうにしながらしっかり並べ直して遊んでいた。

おわりに
 動画から始まったボウリング遊び。身近なものをボウリングに見立てて遊ぶ姿はまさに子どもらしさを感じられました。大人にはない発想。最初は1つ2つ立てたピンに対してボールをそっと転がしていましたが、今となっては十数本のピンに向かってフォームもしっかり決まってd、勢いよくまっすぐ投げられるようになりました。家庭ではボウリングばかりしているので、一時的にボウリング場へ行く事を控えることもあったようですが、それでもクレヨンでレーンの様な線を描いてクレヨンを転がし本物のボウリングのようにして遊んだりもして、懸誠ちゃんのボウリング熱は冷めることはありませんでした。
 このボウリング遊びを通して人間関係においての変化もあり、お友達とのぶつかり合いを防ぐ為、また、懸誠ちゃんがのびのびと満足いくまで遊ぶ為に、部屋を出て落ち着いた環境の下一人で遊ぶこともありました。そして一人遊びから次第にお友達との関わりが増えて、今となっては一緒に仲良く遊べる様になって成長を感じられました。 
 保育士が、ボウリングのピンになりきってみたときには、生き生きと笑っていて、その笑顔が忘れられない程とっても楽しそうに遊び込んでいました。

コメント
 記録者猪原のレポートを読んで「どうして1歳児の懸誠ちゃんが、ボウリングの意味も知らないのにこんなに夢中になるのか、喜ぶのか」と思い、コメントしてみました。
 1歳頃の子どもは、手に何かを持てば投げたり落としたりして、壊してしまうことが多いようです。食事をしながらスプーンを落とす、拾ってあげるとまた落とす、積み木を積んであげると倒して喜ぶ、砂を投げる、ボールを投げる、ドミノの倒れていく様子に歓声をあげる。同様にボウリングのピンが倒れると「やったー」と。
「子どもは壊し屋さん」なのです。これを投げたらどうなるのかな、落としたらどうなるのかな、壊れるものか、壊れないものか、ということを調べているといわれます。その調べたいというのは、知的好奇心です。その芽生えです。大事に見守ってあげる。どうしても壊されたくないものには子どもの届かない場所に置く、仕舞う。また、大切なものだから壊さないでね、と教える。
 子どもの知的好奇心はどんどん発達して将来への、勉強への意欲や、科学への興味につながっていくと思います。
                                  猪俣美智子記
*参考資料 子育ての達人/NPO法人 イー・プロフェス

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